コラムブログ「だが興味は持て」

気が向いたら書く!

「純粋に楽しむ」に興味を持て

プロレスが好きである 理由は特に無い

 

きっとこねくり回せばプロレスが好きな理由くらい30個は思いつくだろうが

そういう事ではなく「プロレスが好きだ」と言いたいという 今日はそういう話である

 

思い起こせば中学生の頃 友人Kが拾ってきたプロレスの優待券

当時はそこら中のコンビニとか商店に置いてあった気がする それを筆者に見せてきて

 

「『ストーカー市川』だって!なんだこれー!」と妙ちくりんな恰好をしたレスラーを指して

他愛も無い笑い話に興じていた それがプロレスへの最初の興味だったと思う

 

時は経って20年 その「ストーカー市川」改め「このまま市川」選手の試合を生で観て

猛烈な感動を覚える日が来るとは考えもしていなかった

 

2022年7月30日・31日の「ドラゴンゲート」ビッグマッチを観に行く事になった

 

とあるツテで招待券を2枚貰った 誰かを誘って2人で行くのも考えたが

「極力誰とも話したくない期」に突入している筆者は結局両方の日程を1人で観に行く事にした

 

筆者よりプロレスに詳しい人と行くならばまだしも狭い交友関係の中でそんな友人は居らず

知らない人に逐一説明をする(しかも一部知ったかぶりが入る)のが煩わしかったからである

 

プロレス好きではあるがあくまで新日本プロレス党であり

他の団体はそんなに熱を込めて追っていなかったから これを機にじっくり観たかったというのもある

 

ドラゴンゲート」というのは兵庫県神戸市を本拠地とするプロレス団体だ

中軽量級の若手選手が中核を成しており いわゆる昭和のプロレスとは一線を画している

 

ゆえに若い女性ファンも多く 時代が時代なら黄色い声援飛び交うような華麗さが売りなのだ

 

とはいえ団体の歴史は古く 遡れば「闘龍門」というプロレス学校に端を発している

今なお良い味で魅せるベテラン選手も多数居り 一つの興行でもバラエティに富んだ試合が楽しめる

 

前述の「このまま市川」選手もベテランの一人だ

165cm47kg(『キロぐらい』と読む)という レスラーはおろか一般的にも小柄な体格

 

「滑走王」「最弱」と呼ばれる通り 弱さとやられっぷりが最大の特長で

ひょうきん族ブラックデビルを模したコスチュームも相まって非常にコミカルに映る

 

弱さも突き詰めれば武器になるというプロレスの奥深さを体現するような

というかそんなん考えずとも会場の爆笑をさらい続ける偉大な選手である

 

そんな市川選手のシングルマッチが行われると知ったのは

会場に着いてオープニングムービーを見たその時 事前情報は全く入れずに行ったのだ

 

この日は闘龍門の創設者である「校長」ウルティモ・ドラゴン35周年記念大会であり

エル・イホ・デル・サントやザ・グレート・サスケといった大物の来場もあり大盛り上がり

 

そんな中で「復活!!暴走十番勝負」と銘打たれたこのまま市川vsXのカードは

異彩を放ちながら対戦相手が未開示という事も手伝って期待値が上がっていた

 

筆者もそれほど詳しくはないのだが 市川選手はそのキャラクター性もあってか

過去に長州・大仁田・藤波・健介・ブッチャーといった超大物との試合をこなしている

 

ましてや校長の記念興行 そこいらのビッグネームでは気が済まないぞと

Xの入場を待ち構えていたところ 会場に鳴り響く耳慣れたテーマソング

 

あまりの事に一瞬考えた 考えてやっぱりそうだと思い直した

 

武藤だ

武藤敬司のテーマソング「HOLD OUT」だ

 

言わずと知れた現プロレス界最大の超超ビッグネームであり

2023年に現役を退くと宣言した 引退ロード真っ只中の武藤である

 

おそらく筆者を含めた会場中の大多数が「そんな訳ねえだろ」

もしくは「神奈月がモノマネで出てくるのか?」と思っていたと思う

 

しかしながら重たい足取りでゆっくりと入場する武藤の姿がスクリーンに大写しされ

武藤本人である事が筆者にもはっきり分かってしまった なんてこったい!と思った

 

外人が言う「THIS IS AWESOME!」というのはこんな気持ちなのだと初めて知った

 

リング内で対峙する市川(『嫌だよ!』『怖いよ!』としきりに叫んでいた)と武藤

 

期待にそぐわぬやられぶりで 試合時間はわずか3分ちょっとであったが

フラッシングエルボー 足四の字 シャイニングウィザードという代名詞は全て観る事が出来た

 

何よりあの日 中学生の自分達が何気なく笑いの的にしたストーカー市川選手が

目の前で武藤に立ちはだかられ 渦のような歓声と笑いを起こしていたのが感慨深かった

 

誠に勝手な想いではあるが 今より純粋だった気持ちがフラッシュバックしたような

 

もちろん他の試合も 特に2日目メインの吉岡vs箕浦も!

ぶつかり合いが生む多幸感に溢れた最高の試合で しばらく余韻に浸り動けなかった

 

画面上や文字上でプロレスの情報は沢山入ってくるけれども

生で観るというのが一番純粋な楽しみ方なのだなと再確認した二日間だった

 

そして件の試合を見終わった後で配偶者に送ったLINEメッセージには

「すげー!武藤だ!すげー!すげー!」というライガーばりの興奮に満ちており

 

こういうものは後から客観視するものではないな とも再確認したので

純粋さを閉じ込めた今回の記事はこのへんでお終い みんなもプロレス観ようぜ!