コラムブログ「だが興味は持て」

気が向いたら書く!

「夏とトンテキ定食」に興味を持て

先日旅行で行った大阪にて晩御飯を食べていた時の事である

 

その店は洋食屋さんだけれど昔ながらの定食屋さんといったテイストで

トンテキ定食が名物との事なので迷わず注文したらご飯が想定の1.5倍大盛だった

 

トンテキ自体も大きめなのだが それをおかずにご飯を食うには少しアンバランス

しかも「ご飯おかわりあったら言ってくださいねー」との捨て台詞まで頂く始末

 

さてどうやってこの米を攻略しようか考えながら食べていたのだが

案の定ご飯が余る流れになってきた このままでは白米オンリーイートを余儀なくされる

 

別に米は好物なのでそれでも良いのだが トンテキ+米に比べるとちょっと口が寂しい

卓上にはウスターソース 皿には残りのトンテキとキャベツとだし巻き卵が乗っている

 

米にウスターソースをかけて食べるか?

しかし出先でそんな行儀の悪い事をしていいのか 中途半端な育ちの良さが邪魔をする

 

色々思案をした結果 とある事を思い出した

 

関西人はだし巻き卵でご飯を食べるのだった

おそらくこの米の量は おかずをトンテキとだし巻きで想定した量だったのだ

 

他の地方民ではあまり考えられない事であるが 関西にはだし巻きと味噌汁とご飯

その名も「だし巻き定食」なるものが存在するくらい だし巻き卵に信頼を置いている

 

かくいう筆者は実家の卵焼きがあまーいヤツだったのもあり

今でもちょっとだけだし巻き卵に抵抗がある だって甘くないじゃん

 

見た目やイメージと実際の味が合わないという理由で苦手な食べ物は他にもある

赤飯(だって見た目和菓子じゃん)や茶碗蒸し(だって見た目プリンじゃん)がそうだ

 

結局だし巻き卵でご飯を食べる事はせず 皿に残ったソースをねぶりながらご飯を食べた

育ちの良さが中途半端な故にモラルは崩壊した ただし美味しかった

 

そんなだし巻き問答とは関係なく 店内でかかっていたBGMについて今日は言いたい

 

だし巻き事変から15分ほど時を戻した頃

まだ白米の余り具合を気にする事も無く トンテキに舌鼓を打っていた頃である

 

お店の中には有線放送がかかっており その時は我々世代で言う懐メロが流れていた

定食屋ではあるが居酒屋使いも出来るのでそういった環境作りは大切なのだろう

 

不意に知っているイントロが流れた すぐにクイズの答えが出た

ZONEの「Secret Base ~君がくれたもの~」である

 

ドラマ「キッズウォー」や アニメ「あの花」のテーマソングとしても有名だが

どっちも観たことが無いのでそれについての言及は出来ない

 

ただし筆者も曲は大好きで 一時期はカラオケの十八番としても鎮座する曲であった

 

しかしながら幾ら記録的猛暑とは言え 時は6月の下旬である

「君と夏の終わり 将来の夢」と歌われたのでは「まだ早いよ!」とツッコまざるを得ない

 

そもそも近年は10月の半ばぐらいまでずっと暑い日が続いているので

「10年後の8月」と歌われても「まだ夏の終わりって感じじゃないよ!」とツッコ(略)

 

思えば8月の終わりが夏の終わりだと思えなくなったのはいつからだろう

幼少のみぎりはお盆が終わった辺りの何とも言えない寂寞たる気持ちがあった気がする

 

9月になっても10月になってもまだまだ暑さが続くのも無関係ではないだろう

それでも大人になって夏に想いが馳せられなくなってしまったのも無関係ではないだろう

 

いい年こいて「夏の終わりは寂しいねえ」と言うのも

トンテキ片手にご飯をかきこむ今の姿とは悪い意味でのギャップがある

 

「そもそも存在しなかった青春」を追い求めるのは我が人生の一つのテーマである

 

浴衣姿のかわいこちゃんと夏祭りに行ってかき氷を食べて花火を観て

人影まばらなところで良い雰囲気になって……っていう漫画みたいな恋がしたかった

 

ところが今の筆者を俯瞰で見ると定食屋で「このだし巻きでけぇなぁ」と驚嘆し

ご飯とおかずのバランスに思索を巡らせる中年男性(手ぶらで旅行中)が居るだけである

 

理想と現実とのあまりの乖離に寒気がしそうになりながらも

飯を食べ終えて外に出た夕暮れのむわっとした空気は否応なく夏の始まりを呼び起こすのだ

 

もくもくとした入道雲のように盛られた白米 日焼けた肌の如くこんがりとしたトンテキ

祭り囃子の代わりは太鼓腹を叩く音だ 何とも絵にならない風景である

 

筆者の人生が漫画なのだとしたら作画担当が良くないので変更してもらいたい

大暮維人先生とかどうだろう そのままエロ漫画みたいな人生にしてもらって構わないぜ