「好き嫌いの理由」に興味を持て
昔から食べ物の好き嫌いが多い性分で損をしてきたと思う
特に幼少期は身体の弱さから食べ物を制限される事も多く
また母上が筆者に輪をかけて好き嫌いの多い性格のため 食卓に上がらない食材も数多あった
固形チーズ・ウインナー・キノコ類・アルコール類が前者であり
納豆・セロリ・シナモン・わさび・貝類が後者に当たる 共通点がありそうで無い
それらはそれなりの大人になった今 克服したものもあるしそうでない物もある
筆者ももう34歳になろうとする老人会予備軍なので劇的な改善は見込めまい
大体が「口に合わない」「匂いがきつい」「食感が苦手」という
体内に摂取を開始してからの感覚における理由によるものなのだが
「食べにくい」という そもそもの方法による理由が付け加わるような気がしている
5人家族+犬というそれなりの頭数を揃えながらも3LDKに甘んじていた我が家族
そして長男という立場からして例に漏れず筆者も一人暮らしに憧れていた
県内の適当な大学に入学した後 演劇部の活動で終電まで残る事も多くなり
大学近くへの下宿住まいを直訴したところ 仕送りをしないという条件で許可が下りた
それからほどなく 部活動との兼ね合いを考えて夜勤のバイトを始めた結果
生活リズムと自律神経が崩れ 単位を落とし シフトに入れず金も無くなり実家に舞い戻った
それについては過去の記事へと嫌になるほどしたためたので割愛するとして
一人暮らしの定番と言えばスパゲティ というイメージを何となく持っていた
筆者もひとかどの大学生になるためパスタの束と茹で鍋を持参し下宿に臨んだが
わずか数束のパスタを使い切るまでにかなりの時間がかかったのを覚えている
その間実家から送られている米は食べていたので食欲が無かった訳ではない
スパゲティ自体は好きである
凝ったようなパスタではなく ミートソースやカルボナーラが特に好みだ
にもかかわらずパスタの消費がなかなか捗らなかった理由について
その調理の煩わしさと食べにくさが原因であるに他ならない
まず調理についてであるがパッケージには「たっぷりのお湯を沸かし」と書いてある
「たっぷり」という表記は筆者にとって「空気を読め」と同じ難易度なのでここで1つまづき
最近のスパゲティならさにあらず 昔のものは茹で時間がやたら長かった
10分とかそこらという中途半端な時間をただ待つ苦痛で2つまづき目だ
その間にソースでも作ってれば良いじゃないかという意見もあるのだろうが
そんなマルチタスクが出来る器用さがあればもうちょっと人生は上手く転がっているし
そもそも貧乏学生の下宿に2口コンロなんて神器がある訳無いので3→4つまづき
数多あるハードルを乗り越えたとて最後の関門は食べる時である
スパゲティをすすってはいけない という微妙な育ちの良さから来る教えが仇となって
何とかフォークでパスタを巻いて食べようとしてもそんな器用さがあれば(以下同文)
(独り暮らしの食卓なんて誰かが見てる訳じゃないし)と高を括って
ズルズルとスパゲティをすすればミートソースがシャツに飛んで洗い物が増える
挙句の果てに 茹で時間10分・ソースの温め時間7分
お湯が沸く時間も鑑みれば30分くらいは優にかかっている調理時間なのに
食べる時は10分もかからぬ超速具合でこれは何とも切なくなる
食後なのに何らかの喪失感があるような 腹は満ちるが心が満ち足りないような
パスタを食べるという事を考えただけでこれだけのハードルが待ち受けているのだ
これが未だにパスタに足が向かない遠因となっているといっても過言ではあるまい
おしゃれフードの代名詞のような存在のパスタであるが
そのおしゃれさの裏側には筆者のような門外漢がひしめいている事を知ってほしい
そして今日も豚バラと玉ねぎを炒めてだし汁で煮ただけの
簡易的な豚丼をスプーンでかき込むのである こいつぁうまいぜ