コラムブログ「だが興味は持て」

気が向いたら書く!

「ダイヤル」に興味を持て

昨年9月の事ではあるが 新しい自転車を買おうと決めたのだった

 

ちょうど人生何度目かの賞与も入り それなりの出費にも耐えられる懐具合を得て

そういえば今乗っている自転車もガタが辛いなと思っていたところで

 

近所にある自転車屋さんに乗り込み「チャリくださーい」と勇んだところ

 

くだんの新型なんたらウイルスの影響下もあり 自転車の在庫が乏しい時期との事

 

「これがいいかも」と目星を付けていた自転車の型番を告げると

「入荷は2022年の2月になります」と告げられてしまう

 

かと言って他のものを選ぶというのも 妥協をしているみたいでちょっとナンである

待っている時間もデートとはよく言ったもので 来る2月を待ち遠しくしていたところ

 

「納期が延びて4月になりました」という 心底申し訳なさそうな電話が入ったのが先日

 

ここまで待ったので勿論待つのであるが(上田晋也『お前はあみんか!』)

それまでにわくわくが抑えられず 自転車用品を色々揃えてしまっていた

 

例えば交換用のハンドルグリップであったり 車体に取り付けるサドルバッグだったり

 

そして自室の自転車グッズコーナーをがさごそしていたところ

見つけたのがダイヤルロックであった いわゆる自転車の盗難防止用品である

 

筆者が所持していたのは 3桁の数字を合わせて解除するタイプの鍵であり

その数字は任意に設定が可能であった為 既に過去の自分が設定を終えた状態だった

 

設定は過去の自分が終えてしまっていた

 

そして手元にあるキーの数字は「000」に合わさって 頑強に鍵が閉じられている

 

つまるところ 解除番号が分からなくなってしまっていたのだ

 

すぐさま自分が思い付きそうな数字 ex. 暗証番号 誕生日 配偶者の誕生日 etc..

どれを入力しても解除の気配はない そして僕は途方に暮れた(上田晋也大沢誉志幸か!』)

 

こうなったら「総当たり」しかない

幸いにもこのキーロックは数字3桁だ 全部試しても1000通りである

 

前職の後遺症及び長年に亘る右手の濫用により慢性の腱鞘炎を抱えた指を酷使し

ダイヤルを合わせてはロック部の確認 またダイヤルを合わせて……を繰り返した

 

願わくば100番台か200番台ぐらいの若い数字に設定してくれている事を望むも

無常にもカウントアップは止まず 500番台に突入した所で筆者は憂う事すらしなくなった

 

ただ無心に数字を合わせ 鍵が解除されているかを確かめる

 

効率の良い指の動かし方とスムースに指を動かす運動能力

軌道に乗った後で筆者が出来ることは なるべく雑念を持たず作業に集中する事だった

 

暖房も付けずかじかむ足先をもろともせず 進むべき道を見据えてただ前に向かっていた

サンドウィッチマン伊達『男塾名物直進行軍か!』)

 

600番台……700番台……800番台と続き 900番台に差し掛かろうとした時

急にロック解除の手応えが指先を襲った カラビナがスムースに開いたのだ

 

達成感もあったが 何よりこの鍵が何番で開いたのかそれを覚えておかねばいけない

筆者が目を凝らして確認した手元のロックには「893」と記してあった

 

「893」

 

「やくざ」である

 

設定を行ったその時の筆者が何を考えていたのか 今となっては知る術は無い

ただ「893」にダイヤル設定を行う半ニヤケ顔の自分は容易に想像が出来る

 

なぁ過去の自分よ これが面白いと思ったんだったら否定はしないよ

 

だけどせめてその番号を覚えておけるくらいの信念は持って行動しようよ

 

2022年1月23日午前11時 こうして筆者は去年の自分と決別した

今は色んな意味で清々しい気分でいっぱいです ハッピーニューイヤー!