コラムブログ「だが興味は持て」

気が向いたら書く!

「『映画すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』」に興味を持て

普段映画を観る事はほとんど無いのだが

こればかりは封切り翌日に映画館に足を運んだ

 

待ちに待った「すみっコぐらし」映画版の第二作目である

 

筆者がそもそもすみっコぐらしの大ファンである事に加え

前作「とびだす絵本とひみつのコ」は特に大人の心をえぐるであろう切ない大傑作であった

 

この作品の事を思い出すと確実に感情がバグるので 読者諸兄観て頂きたいのであるが

実際筆者はこの文章を打ち込みながら 思い出しウルウルをしている

 

今作「青い月夜のまほうのコ」も とてつもなく優しい涙腺刺激作品だった

特に主題歌であるBUMP OF CHICKEN「Small World」との相性は抜群だと言いたい

 

詳らかに作品を紐解いていくと それこそすみっコぐらしの魅力から語らなくてはならず

文字数と情熱にアクセス数が比例しなくなるので また別の機会にするのだが

 

すみっコ達の暮らす世界に 魔法界から5人の魔法使いがやって来て

その末っ子が取り残されてしまいどうしよう……というお話だとは理解頂きたい

 

(以下 きちんとネタバレをするので注意されたし)

 

この残された末っ子「ふぁいぶ」を含めて すみっコぐらしのキャラクターには未熟さがある

 

人見知りで寒がりの「しろくま」はいつもぶるぶる震えているし

お人よしな「ねこ」は 自分の体形を気にしているのに食いしん坊である

 

極めつけは自分が何者なのか自信が無い「ぺんぎん?」の存在なのだが

足りないところがある故に 他の存在への思慮や許容性が際立って見えるのだ

 

特に自分と同じような境遇に立たされたキャラへの関係性が強く描かれている

前作で言うと「ぺんぎん?」と「ひよこ?」 今作では「とかげ」と「ふぁいぶ」

 

「とかげ」は実は恐竜の生き残りで 自分をとかげであると偽って生きているという

文字にして読むとすさまじくハードボイルドな立ち位置のキャラクターだ

 

しかしながら そんなネガティブを抱擁する優しさが全キャラに備わっているため

重苦しくもならないし登場人物に苦手意識が生まれない 稀有な世界観なのである

 

さて取り残された「ふぁいぶ」なのだが 魔法使いの世界に戻るには力が足りない

それどころか兄弟が自由に使える魔法も上手く使えず失敗してばかり

 

その失敗が引き起こす騒動の中で 「ふぁいぶ」は夢について考える事になる

 

魔法使いは何でも叶えられるが故に 自分自身の夢を持っていない

「ふぁいぶ」も同様で 夢について教えられる事が無かったから夢を知らない

 

魔法使い達は 言わば夢を持たない(忘れてしまった)大人の比喩であり

「ふぁいぶ」は幼すぎてまだ夢を知らない存在だと感じた

 

終盤で「ふぁいぶ」は自分の夢を自覚し一歩成長するシーンがある

それはすみっコ達の献身によるもので 特に「とかげ」との関係性が大きい

 

「とかげ」は「おかあさん」と離れて暮らしている

「おかあさん」はどこからどう見ても恐竜なので 見つかると大変な事になってしまうから

 

家族と離れ離れだという事も隠して生きている「とかげ」だが

ふとした出来事でそれを「ふぁいぶ」に薄っすら知られてしまう

 

この時の「ふぁいぶ」の(おなじだね)という台詞は

成熟していない者同士が持ち合う共感そのものであり この上なく暖かく優しい感情だ

 

かと言って 大人が何でも出来て完璧な存在であるとしていないのも今作の特徴で

 

兄弟達が「ふぁいぶ」を迎えに行く為に 現世に渡る為の新たな魔法を探すシーンがある

何でも出来る魔法使いでも 努力し時間をかけて結果を残した事が描かれたシーンだ

 

夢を忘れてしまった大人でも 頑張る気持ちは決して忘れてはいない

全方位に隙無く優しさを発揮した この映画ならではの胸を打つ場面だと思った

 

そしてスタッフロールで流れる「Small World」にて

(どうして分かったの おんなじだったから)と歌うBUMPにまた涙腺の堰が切られる

 

気付けばマスクを涙で濡らし ハンカチを忘れた事を後悔する筆者の姿があった

 

「生きづらさ」という言葉は現代社会の一つのテーマになりつつある

筆者も生きづらさについて考える機会が無いではない

 

そんな生きづらさを抱える人達へのエールや癒しでもあるし

かく言う難しい事を考えなくても 単純にかわいさに溢れたとても良い映画だと思っている

 

さて 封切り翌日(11月6日)に観たものを今レビューする行為についてだが

配偶者も観た後でないとネタバレについて怒られる懸念があり 今日まで温めていた

 

うっかりネタバレしても許して貰える優しい世界観を求めたいところであるが

 

2回観て議論を交わして初めて気付くところもある なかなか深い作品でもあるので

読者諸兄も観てみるべし おすすめです