コラムブログ「だが興味は持て」

気が向いたら書く!

「略称」に興味を持て

ラジオを聴いていると頻繁に耳にするCMがあって

今日はそれに関するお話

 

 

ラジオというのはご存じのように 聴覚に頼るメディアであるので

喋り手の声質や滑舌が大切になるのは周知

 

また 小宮の滑舌の悪さを逆手に取って面白さを生み出している

三四郎オールナイトニッポン」のように

 

パーソナリティの弁舌がクオリティに如実に表れてしまうものである

 

そして僕が気になっているCMというのが その弁舌という点において

なんとも絶妙に気になってしまうローファイっぷりを醸し出しているのだ

 

説明をしないと何も伝わらないので

ここから出てくる固有名詞はすべて実名であることをまず記しておきたい

 

 

そのCMは「ウィッチズポーチ」という化粧品のCMであり

喋っているのは「生見愛瑠(ぬくみめる)」というモデルの方

 

(まず間違いなくどんな変換ソフトでも一発変換されない名前なので

これ以降は生見さんの愛称である『めるる』と表記する)

 

この方が「ウィッチズポーチ」のイメージキャラクターを務めている模様で

CM全編に及んで ギャル特有のやや気だるげヴォイスで喋っているという作りである

 

実を言うと この「ウィッチズポーチ」「生見愛瑠」という名前に辿り着くまでにも

若干の紆余曲折を経て 調べが及んだ次第

 

というのもこの方 絶妙なレベルで滑舌が悪いのである

 

「黙って聞いとけ」が「溜まったヒートテック」に聞こえるとか

 

(分からない諸兄は三四郎の漫才を観てみよう!)

 

そういうネタになるような その一歩手前でぎりぎり留まっているような

日常生活で困りそうだけど普通には生きていける そういうレベルである

 

 

もちろん商品やブランドのCMなので ネーミングを出すのは必須で

特に肝要である「ウィッチズポーチ」という名前は何度も出てくるのだが

 

それら全て「リッチーズポーチ」に聞こえるのだ

 

たちの悪いことに 仮にブランド名が「リッチーズポーチ」であったとしても

単語としてはあまり違和感なく受け入れられてしまうのがこの問題のミソその①

 

しかし時代は情報化社会真っ盛りである

耳から入った情報であっても 文字として調べねば広がりを見せないのだ

 

その行動パターンに漏れず

僕も検索エンジンに「リッチーズポーチ」と打ち込んで虫メガネボタンを押すと

 

「リッチーズポーチ」という単語は ひとつも見つからなかった

 

代わりに「ウィッチズポーチ」という 音の響きはたしかに合致するけれど

微妙に違うものなのではないかと もやもやする検索結果が出てくるのである

 

 

そこでこのCMから得られたもう一つの情報

CMでの喋り手の名前である「ぬくみめる」という名前を検索してみて

 

その関連ワードで「ウィッチズ~」が出てきたら これで間違いないだろう

 

そう仮定を進めて調べてみようと思ったら 足を引っ張る問題のミソその②

 

彼女の弁舌クオリティにより「ぬくみめる」という

ただでさえオジサンには認識しづらい人名が 間違って聞こえてしまっていたのだ

 

具体的に言うと「みくみめる」という人なのだと思っていた

 

思っていたものなんだからしょうがない このワードを検索に打ち込むと

なんと出てくるのはご本人「生見愛瑠」その人の名前なのである

 

 

以上の調査により 得られた僕の感想は2つである

 

まずは 僕のようにこのCMを聞いて 固有名詞を間違って聞き取って

それをそのまま検索してしまう人ってのが沢山居たんだろうなあ ということ

 

もう1つは Google検索って多少あいまいな語句で検索しても

元通りの正しい答えに辿り着けるようになってんだなあ 頭いいなあってこと

 

でないと 間違ったキーワードで正しい結論に導かれる事象が

しかも同じテーマにおいて2つ立て続けに生まれるというのは説明がしがたい

 

それが彼女の個性的な滑舌によるものか

それとも僕のように聴覚認識が愚かになっているリスナーが多いのか

 

そこについては不明であるし あえて結論を出すべきではないだろう

 

 

 

こうして晴れて彼女が「ぬくみめる」という名前であり

彼女がイメージモデルをしている「ウィッチズポーチ」というブランドなのだと

 

知ることはできたのだが 棚に上げた問題がまだ実は残っている

 

 

CM内で彼女は こう話しているのだ

 

「ウィッチズポーチ、略して”ウィチポ”」

 

確かに「ウィッチズポーチ」という名前は ファッションブランド名としてともかく

声に出す呼称としてはやや長めのネーミングであるといえる

 

それを略称にして 呼びやすくしてもらおうという狙いも分かる

 

僕が引っ掛かっているのは 彼女がそれを言った以降であっても

「ウィチポ」と呼ばずに ずーっと「ウィッチズポーチ」と呼び続けている様であるのだ

 

 

それはちゃんとしたブランド名を覚えてもらうための 律儀さなのかもしれない

 

しかし現実問題 僕はブランド名を間違えて覚えていた

それどころか あなたの名前も間違えて覚えていた

 

それは彼女の滑舌の為せるワザなので

個人のポテンシャルの追求になってしまう それは酷な話である

 

ただ せっかく提唱した略称をその後一切使わないというのは

CM原稿を作った側の問題だと思うので 彼女に責任は一切無いはずである

 

とにかく引っ掛かる

せっかく作ったルールを自分で放棄している彼女(及びCM製作者)の無軌道さが引っ掛かっている

 

ついでに言うと「ウィチポ」という略称がこれまた絶妙に言いづらいのも気になる

 

 

考えてみると この世には略称が溢れかえっている

 

分かりやすい例を挙げれば 木村拓哉(元SMAP)は「キムタク」と呼ばれ

木村拓也(元日ハム・広島・巨人)は「キムタク」と呼ばれる

 

キムチカルビ丼(松屋のメニュー)は「キムカル」と呼ばれて

天達武史気象予報士)は「アマタツ」と呼ばれる

 

口に出しやすい音節というのは それだけ重宝されているという証左である

 

 

しかしどうにも 納得のいかない略称というのも存在する

 

「ドリカム」は 皆さんご存じの通り「Dreams Come True」の略であるが

ドリカムだけを残してしまっていて「トゥルー」がまるで無視されてしまっているのだ

 

ドリカムだけでは 夢は来るだけで現実になりはしない

それじゃあ何とも 寂しいではないか

 

同じように「マイラバ」も「My Little Lover」の略であるが

「リトル」の部分を抜かしてしまっており 意味もやはり若干変ってくる

 

つまり「私のかわいい恋人」から「私の恋人」へと変化を遂げ

最終的にはakko小林武史と離婚しているので 恋人ですらなくなっている

 

 

しかしこれらは あくまで日本語を嗜む我らの作り出した略称である

外国ではどうなっているのかというと もうちょっと分かりにくく略を作っている

 

つまり彼らは 単語の頭文字を取って略称としているのだ

 

有名なところでいうと 「Back To The Future(映画)」は

頭文字を一つずつ取って「BTTF」と表記されている

 

イギリスのロックバンド「Bring Me The Horizon」も

やはり頭文字から「BMTH」と略称を作られているのだ

 

そういえば 日本のコンテンツであっても

例えば「オールナイトニッポン」の略も「ANN」とされている

 

ただこれはあくまで「表記」である

つまり文字で表した時の略称だ

 

声に出して呼ぶときに まさか馬鹿正直に

「ビー・ティーティー・エフ」と呼ぶわけではあるまい

 

かと言って 日本型略称に倣って

「バックフュ」という間の抜けた呼び方をしているとも考えづらい

 

これについて 英語英文学科を卒業しており

映画についてもそれなりの知識を有している 我が配偶者に聞いてみたところ

 

「グウ……」という意味のない音だけを残し 回答が返ってくることはなかった

 

(寝ているところに無理やり聞いたのがまずかったかもしれない)

 

 

果たして問題は何一つ解決されることなく

コラムとしてもそろそろ幕を閉じねばならぬ長さになってきた

 

ただ一つ確かなのは その力感の抜けた滑舌のおかげで

あるいは折角作った略称を使わないという乱暴さのおかげで

 

僕が「ウィッチズポーチ」に関心を持つことになった その一点である

 

しかしここで出てきた新たな疑問としては

 

果たして僕のような三十路深夜ラジオリスナーオジサンに引っ掛かられて

コスメブランドのマーケティングとしては正解なのだろうかということ

 

ひょっとして若い女性ってのは あの滑舌であっても

ネーミングをしっかり聞き取れるのだろうか

 

そうなると 長々と書いてきた僕の提言というのは

全部僕の聴覚と理解力が悪い ということで収まってしまうのだが

 

それを確かめようにも 僕の周りにギャルはおらず

ただスヤスヤと寝息を立てる配偶者が鎮座しているばかりである