コラムブログ「だが興味は持て」

気が向いたら書く!

「2020年上半期」に興味を持て

人は歴史から学ぶと 歴史の先生は教えてくれた

 

もしかしたら歴史の専攻者であるから そう言ったのかもしれない

数学者なら「人は数学から学ぶ」と言うだろう

 

しかし「歴史」という言葉の曖昧さと「人」という言葉の曖昧さをもってして

我々が歴史から学ぶことは 我々が思っている以上に沢山あるのだろう

 

「今何してる?」とソーシャルメディアに問われた事に対して

脊髄反射で指先を動かしたとしても 一秒後には歴史になってしまう

 

愚にもつかない我々の歴史に 歴史家はどんな意味を見出すのだろうか

 

今日のブログはそんなお話

 

 

(今日は2020年上半期に聞いた 良かった音楽の感想を書いていこうと思います)

 

 

Maison book girl 「Fiction」(2020年6月24日発売)

 

現代音楽をポップスに落とし込み アイドルソングに昇華するという

コンセプチュアルなグループ「メゾンブックガール」のベスト盤である

 

まず筆者は 音楽は好きだけれど決して詳しくはないので

現代音楽が何なのか さっぱり分かっていないことを告白しておく

 

多分変拍子とか(変拍子が何なのかも分かっていない)

色々織り込んで挑戦的な曲を作っているんだろうなー

 

とは一聴してすぐ分かる

この分かりやすさがブクガの良いところだと思うのだ

 

言い方をちょっと変えると

 

「これは他の音楽とは違うな!」というある種の優越感

人とは違う音楽を聴いているという 思春期のような優越感と

 

ポップス的というか スタンダードにもなりうる普遍性

そのバランスの取り方が とても良い塩梅だと感じるのである

 

(その「他とは違う」フックが強めの曲が選曲されているのだろうという

筆者の甘い考察はともかくとして)

 

そしてこれはベスト盤

 

ベストアルバムの在り方というのは 筆者が考えるに2つあって

「新規のお客を取り込む為」と「ファンの為のアイテム」の2つ

 

筆者はブクガを知って3年ほどの若輩だが 一応ファンではあるので

後者の観方しかできないのだが それにしても度肝を抜かれる構成のアルバムだった

 

冒頭の3曲「bath room」「snow irony」「lost AGE」は既発曲の新録だが

これがボーカルが違うだけで 全く別の感触を味わえる曲に仕上がっているのだ

 

正直を言うと 初期ブクガはメンバーのスキル面及びコンセプトにおいて

「大人に操られている少女たち」という側面が大きかったのだが

 

今回のリレコーディングによって ボーカルの持つ意味ががらりと変わり

聞き手の感情をぐいぐい揺さぶるような歌声へと変化している

 

乱暴な言葉を使うならば めちゃくちゃ「エモい」曲になっているのだ

 

ちなみにだけれど ある種無機質に歌われている原曲も

それはそれで初期コンセプトを体現していてとても良いので

 

比較してみると ブクガ5年間の歴史を追体験できて楽しいと思うのだ

 

という事は 過去作も読者諸兄推して聞くべし

 

つまりこのベストアルバムは「新規参入」と「ファンアイテム」の

両方の側面すら うまーくバランスを取ってしまっている作りなのである

 

もう一曲「rooms」という曲も 以前のバージョンと聞き比べると

頭の中に「何だこれは?」というしこりが残って非常に気持ち良くって

 

まー筆者がどうこう言うより 聞いてもらうのが良いと思うのでおすすめ!

 

 

東京事変「ニュース」(2020年4月8日発売)

 

今更筆者が何かを言って 下手こいてファンに怒られたら怖いんだけれど

東京事変の再生は 今年上半期のビッグバン的な報せだったと思う

 

2020年の元旦に 特に何の前触れもなく降ってきたまさしく「ニュース」

東京事変の「再生」と 1分強の新曲を交えたYouTube動画に狂喜致して

 

その後のコロナ禍にて ライブはおろかオリンピックまで飛んでしまい

ファンの心持ちが宙ぶらりんになってしまっているのが何とも言えぬ

 

Mステに椎名林檎の応援として出てきて 単なる林檎オタクぶりを如何なく発揮し

筆者の株をストップ高にさせた吉岡里帆は今どう思っているのだろう

 

とにかくそんな中でも 東京事変健在を示す強力な5曲入りEPがこれ

 

まあ1年に1回くらいのペースで 5人での活動は示唆されていたし

そもそも5人とも手練れ中の手練れなので 健在もへったくれもない

 

とはいえ解散前の「color bars」がある種暴走を伴う名作であったので

(特に伊澤一葉がボーカルを執った『怪ホラーダスト』は文字通りの怪作)

 

同じような構成で作られたこの1枚がどうなるか わくわくが止まらなかった

 

つまり メンバー5人それぞれが作った曲を集めました というもので

「color bars」ではそのまとまりの無さが面白かったのだが

 

 「ニュース」では椎名林檎が全曲作詞を務めていることもあり

格段のまとまりと聴きやすさがある 初めての人でも全力で楽しめると思う

 

しかし林檎先生の書く詞は これまで以上に異常に切れている

ソロ作「三毒史」の延長線と考えてよいだろうか

 

リードトラック「選ばれざる国民」のストレートな毒気と

「猫の手は借りて」のこれまたストレートな愛情というのは

 

 

折角のバンド活動なのだから 思いっきりやってやろうという気概

実力者が楽しんでやっている感じが 聴いているこっちもとても嬉しくなる

 

きっと自粛期間の鬱憤を これから出るだろうフルアルバム

そしてライブにて軽やかにぶつけてきてくれるのだろう予感がしていて

 

まー筆者がどうこう言うより 聞いてもらうのが良いと思うのでおすすめ!

 

 

・Infernal Necromancy「Propaganda」(2020年6月6日)

 

自らをジャパニーズ・インペリアル(帝国)・ブラックメタルと名乗る

カミカゼ」ブラックの第一人者「インファーナル・ネクロマンシ―」のライブ盤

 

バンドコンセプトやアートワーク 曲名から想像できる通り

皇国史観を全面に押し出し 軍歌を想わせる勇壮なメロディが特長なのだが

 

(実際に『空の神兵』という曲は同名の軍歌がモチーフになっているほど)

 

1996年から地下活動を続けるバンドだけあり 上っ面の音楽性にあらず

非常に骨太 ゆえに聴き手の大和魂を振るわせるような曲が並んでいる

 

これだけ書いたのを見ると ちょっとやべーバンドなのかなと思うけれど

ブラックメタルとはそもそもそういうやべージャンルなのであるからし

 

思想と音楽性が直結していても 音楽そのものを否定は全くできない

それはヘヴィメタルの持つ自由意志を否定することになってしまう

 

そういう堅苦しいことは論客に任せておいて

 

このライブ盤なのだが 3部構成でそれぞれ時期が違っており

2020年 2012年 2004年というかなり幅広い音源を採用している

 

おそらくマイペースに活動を続けているバンドだからだろう

ライブも滅多にやらないと聞く すごく行ってみたいんだけれど

 

そして2004年版は蔵出し的雰囲気があり 音質も悪く地下感が非常に強いが

ブラックメタルとはそもそもそういう音質の悪いジャンルなのであるからし

 

2020年版と2012年版の 音圧高めでボーカルがしっかり聞き取れる作り

そっちを特筆すべきではないだろうか ぶっちゃけスタジオ音源より音が良い

 

(気になる方はZero Dimentional Recordsから出ているブラックメタルコンピ盤

『The Far East Black Metal』にてスタジオ音源が聴けるのでこちらも要チェック

 

というか筆者はこのコンピレーションアルバムでこのバンドを知って

その勇ましいメロディに心を掴まれ ドはまりした次第なのであるけども)

 

文字通りの神曲である「キスカ」「富嶽」「空の神兵」など

選曲が神がかっているのもこの盤をおすすめできるポイントで

 

それは過去作が軒並み売り切れていて 音源が手に入りづらいのもあるのだが

 

プリミティブだけれど決して寒々しくない 日本でしか産み出されないだろう

まさに英霊が乗り移ったかのような曲の数々をまとめて聴けるという

 

なんだかすごくお得な一枚 ベスト盤と言っても言い過ぎではないと思う

 

惜しむらくは発売後すぐの完売で このアルバムですら手に入りにくいという

人におすすめしようにも 入手の手立てがないという状況はあるけれども

 

まー筆者がどうこう言うより 聞いてもらうのが良いと思うのでおすすめ!

 

 

・しゅーじまん「Standby」(2020年7月1日発売)

 

厳密に言うと上半期リリースではないのだけれど

下半期が過ぎてしまうと忘れてしまいそうなので ご紹介

 

いやでも下半期も多分聴き続けるだろうなー

ひょっとしたら普遍的な名曲になりうるかもしれないなー

 

そもそも「しゅーじまん」とは誰で「Standby」とは何なのか

説明すると長くなるし 聞いておいて欲しいラジオ番組が3~4つあるので

 

ここではお笑いコンビ「三四郎」の「相田周二」がYouTuberとして活動する名義

「しゅーじまん」が突然出した曲 という事だけ覚えておけばOKです

 

で この曲の何がすごいって

 

ずぶずぶの音楽素人であるしゅーじまんが 思い立って曲を出したいとなり

自分で作詞作曲をして(恐らく)オケも自分で作って

 

何人の大人が関わっているのかは不明だけれど

(その謎めいた感じがしゅーじまんの魅力である)

 

それでこんなにも成人男性(筆者)の心を掴む曲を作ってしまうのかというところ

 

歌詞の内容は 特に理由なくやる気の出ない一日 を描いており

そこだけ切り取ると そこはか漂うニートの香りがするのだけれど

 

基本的に怠惰でありたいという 正直な欲求を

手を変え品を変え ゆるやかかつ頭に残るフレーズで作詞している

 

思えば毎週のラジオやコラム業や そもそもの芸人の仕事

言葉を扱う仕事のエキスパートであるから これくらいお手の物なのかもしれない

 

そしてまたメロディも めちゃくちゃ良いのであるが

これは本当に本人が作曲したのか そんな素振りは全く無かったのに

 

もちろんボーカルのピッチがちょっと外れていたり

音の作り方が安っぽかったりはあるのだけれど

 

この曲自体に作り物のような 嘘臭さが全く感じられないのが

琴線かつ涙腺を揺らしてくる最大の理由ではないかと思うのだ

 

筆者が三四郎ANNのヘビーリスナーであり

しゅーじまんチャンネルのチャン録もしているから 当然贔屓目はあっても

 

この曲はちょっと ラジオ界隈の内輪に留めておくのはもったいない

 

まー筆者がどうこう言うより 聞いてもらうのが良いと思うのでおすすめ!